土地の境界が曖昧で隣人とトラブルになってしまうなど、境界について揉め事が起こってしまうケースがあります。
そういった場合は、裁判所を通じた「境界確定訴訟」の手続きや、法務局による「筆界特定制度」を活用することができます。
ここでは、この2つの手続きの概要や違いについてご説明します。
境界確定訴訟とは
境界確定訴訟は、境界について争う当事者が訴訟に参加したうえで、境界に関する争いを解決するための訴訟手続きのことです。
ここで争う境界とは、国が定める公法上の境界です。これを確定をすることを目的として起こす訴訟ですので、一度訴えを提起したら判決(=土地の境界を確定させる)が出るまで終了させることはできません。すなわち、当事者が合意・和解しても終わらせることができないのが特徴です。
立証責任が当事者にあるため、筆界を確定させるために必要な資料の収集は当事者自身で行う必要があります。また、その費用も当事者自身が負担しなければなりません。例えば、鑑定費用、土地家屋調査士に対する図面の依頼費用、裁判官・書記官の現地への出張経費といった訴訟にかかる費用、弁護士費用などが挙げられます。
そのほか、裁判所は当事者らの主張や証拠によらず独自に最終的な判断をすることができますが、必ずしもその裁判官が境界に精通しているとは限りませんので、こういった点も懸念材料となります。
このように、境界確定訴訟は費用もコストがかかってしまい、境界トラブルを解決するための手段として利用しやすいとはいえません。そこで、これに代わる新たな制度として、筆界特定制度が創設されました。
筆界特定制度とは
筆界特定制度は、土地の所有者などが法務局に対して申請をすることによって、筆界の調査・特定をしてもらえる制度です。
土地の調査や測量を行うのは土地家屋調査士などの外部の専門家による筆界調査委員で、その意見を踏まえたうえで、最終的には法務局の筆界特定登記官が筆界の位置を特定します。土地に関する専門知識のある者が担当するので、信頼性が高いといわれています。
この制度は、隣人同士で裁判を行わなくとも問題の解決を目指すことができますので、境界確定訴訟よりも利用しやすい制度であるといえます。
法的な効力のちがい
境界トラブルの解決のために有効な手段といえる筆界特定制度ですが、この制度を利用することで明らかになるのはあくまで「もともと存在していた筆界の特定」であり、「新たな境界の確定」ではありません。
すなわち、筆界特定制度により筆界を特定したのち、当事者らがこの判断に不服があった場合には、境界確定訴訟を提起し、裁判所によって全く異なる筆界を確定させることも可能というわけです。
境界確定訴訟は、一度確定したらそれ以降は当事者同士で争うことができないのが原則である一方で、筆界特定制度はあくまで行政(=法務局)が明らかにする一基準であるという点に注意が必要です。
境界に関して揉めており、かつ隣地所有者が境界確定の立ち合いにも応じてくれないような場合は、まずは無用なトラブルを避けるために、隣地所有者に境界確定の協力をしてくれるように説得をすることが一番望ましいでしょう。
それでも解決が難しいようであれば、低コストで早期解決が望める最も利用しやすい方法として挙げられるのが筆界確定制度です。また、隣地所有者との信頼関係の回復が見込めない場合は、裁判所を通じて境界確定訴訟によって解決することとなります。
境界トラブルを当事者だけで解決することが難しい場合は、状況に応じて適切な手段を講じることが大切です。